第八話 みなみはマネジメントのあるべき姿を考えた。

 今日のテーマは『組織の短期的な成果と長期的な成長』について、といえるでしょう。

 『明日を支配するもの』の中でドラッカーは「長期のためか短期のためかは価値観にかかわる問題である。……中略……実際にマネジメントを行なっている者は、そう簡単ではないことを知っている。……中略……それは、企業の役割とマネジメントの責任という価値観にかかわる問題である。」といってます。これはとても難しく、かつ重要な問題だということですね。

 お話しの中では、文乃が「組織は弱みを消して強みを生かすものです。」と言って祐之助を外すことに賛同していましたが、これはドラッカーのいっていることに反します。ドラッカーは様々な著書の中で、強みを生かせというと共に、弱みに着目した人事はすべきではない、ともいっています*1。それに対して、みなみは自分の中で確たる根拠はないながらも「たとえ負けることになったとしても、祐之助君の成長を信じて試合に出すことが、マネジメントのすることだと、私は思う。」と強くいっています。この、みなみの迷いと決断は、マネジメントにとってこの問題が難しいものであり、かつマネジメントの真価を問われる問題であるということを表しているのだと思います。

 しかし、この難しい判断もドラッカーの言葉が身についていれば、それほど難しい問題ではなくなります。上述の文乃の言葉を正しく解釈して、強みを組み合わせた組織を作れば良いのです。例えば、準決勝で祐之助のミスをカバーするファインプレーをした田村君は、一年生ながらレギュラー入りした才能ある選手です。準決勝の時のように咄嗟の判断でカバー出来るのであれば、あらかじめ祐之助の性格を把握していれば、より確実にカバー出来るはずです。そして、祐之助の波に乗っている時は良いプレーをするという強みを引き出すことを考える*2。このように、個人個人の強みにのみ着目すれば、難しい判断ではなく、前向きな課題になります。そして、課題が明確になれば解決は決して難しくないはずです。

明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命

明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命

*1:これは、みなみの意見を際立せるために『もしドラ』の作者が敢えて間違った意見をいわせたのかもしれません。

*2:第七話で浅野君のピンチを救った歌や、朽木君のカウントのように、なにか良い方策があるはずです。