第一話 みなみは『マネジメント』と出会った

 いよいよ始まりましたね。冒頭の三宅アナウンサーのナレーションを聞くと、まるで NHK スペシャルのようです。これは、普段アニメを観ない方々にはちょっとした安心感になるかもしれませんね。

 さて、お話しの方ですが、思ったよりも展開が早いですね。しかし、ドラッカーの言葉の解釈には十分に時間を取っていて、ドラッカーを期待して覩る人にも納得いく内容だったと思います。

 今回は最初ということもあって「リーダーの真摯さ」「事業の定義」そして「顧客は誰か」という、どれも重量級の提起を扱っていました。この中で、私が『もしドラ』の最大の価値だと思っているのが、『顧客』という言葉をとても適切に解釈している部分です。日本語でドラッカーの本を読む上で、一番難しいのが、この『顧客』という言葉の解釈だと思います。原書では "customer" と書かれていて、これを日本語に翻訳するには『顧客』と訳すしかないのですが、日本語の『顧客』という言葉には、いわゆる「お客様」といった意味合いしかないので、そのまま解釈してしまうと理解に苦しむことになってしまいます。しかし『もしドラ』では、マネージャである主人公のみなみや夕紀、そして、野球部の部員までを『顧客』と解釈しています。ドラッカーが言う "customer" は、このように解釈するべき言葉なのです。敢えて日本語にするならば『組織に関わり支える人々』といった意味の言葉です。それを、とても分かり易くしてくれている『もしドラ』が 250 万部も発行されて、こうして TV アニメとして NHK で放送されることで、多くの人に伝わることは、とても素晴らしいことだと思います。