第三話 みなみは人の強みを生かそうとした。

 「人の強みを生かすことが組織の目的であり、マネジメントの権限の基盤である。」

 ドラッカーの言葉の中で、私自身が最も共感して最も重要だと感じる言葉が『マネジメント』にある、この言葉です。

 第三話のタイトルを見ると、この点についてがテーマかと思ったのですが、実際のお話しを見ると、少しズレている感じがしました。確かに文乃の『強み』を生かしてはいましたけれど、組織として『強み』を組み合わせて『弱み』を打ち消すという形にはなっていませんでした。また、みなみが祐之助に対して「エラーをした経験」が、彼の『強み』だと言っていましたけれども、これは違うと思います。『強み』とは個人の資質であり、その個人が得意とするものであるはずです。また得意なものを持つということは、その裏返しとして、苦手なものも持っているはずです。「エラーをした経験」を語ることができるということは、確かに野球部という組織にとって有益なことかもしれませんが、それを個人の『強み』ととらえてしまうと、その個人の生まれ持った資質を見失なってしまうと思います。

 『強み』を生かして『弱み』を打ち消すという考え方については、第二話の「私とドラッカー」で、上田先生がおっしゃっていたことが、本質を判り易く表現していたと思います。

 「人は凸凹している存在である。あることについて秀でていて、あることについて秀でていない。」そして「みんな、その凸凹を無くすために一生懸命やる。」しかし「ドラッカーはそれが間違いだという。人間は凸凹である。それが人間の強みなんじゃないか。」そこで「凸凹の出っ張っている所だけを組み合わせれば、素晴らしいチームになる。」と、おっしゃっていました。まさにそれが、人を組織にする意味であり、そのような組織を作り上げることが『マネジメント』の役割なのだと思います。

 『明日を支配するもの』には、「できないことを並のレベルに引き上げるよりも、できることを超一流にするほうがやさしい。」とも書かれています。いわれて見れば、当たり前のことだと感じますが、忘れられていることが多いのではないでしょうか。

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

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明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命

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